
わたしの語彙力は、いい作品に出会うと壊滅する。「よかった……」以外の発せないくらいに。そんなわたしの語彙を新年早々枯らしてくれたのが、現在日生劇場で上演されている『ザ・ビューティフル・ゲーム』だ。
この作品は、北アイルランド紛争をテーマに実話をもとにして作られたもので、サッカー選手を目指す主人公のジョンとその恋人やチームメイトたちが紛争に巻き込まれていくさまが、アンドリュー・ロイド=ウェバーの素晴らしい楽曲に彩られながら描き出されていた。
ともにサッカーに打ち込むはずだった彼らが、紛争により分断され争い、ある者は他国へ逃げ、ある者は刑務所に入り、ある者は命を落としていく。容赦ないストーリーで心にずっしりくるのに、明るさも感じられたのは青春のきらめきを含んだ曲たちのおかげだったのかもしれない。希望のあるラストにも心が非常に救われた。
でも、北アイルランド紛争がたどった道を鑑みると、きっと彼らは物語が終わったその先でも、たくさんの苦悩を抱えて、過酷な運命と向き合いながら生きていったのだろう。
「俺はこの戦争に勝てると思っていない。でも、勝てなくても負けないことが大切で、この戦いを次に繋ぐことで、もっとよい未来が待っているかもしれない」といったことをトーマスが言っていたのがすごく印象的で。
ジョンと方向はまったく違っていたけれど、彼は彼で守るべきものを守るために必死に行動をしていて、誰も悪くないのに悲惨な方向に進んでいくのが悲しかった。でもそれこそが戦争を含めた人間の争いと切っても切り離せない側面なんだろうなと思う。
人間は争いをやめられたことがないし、愚かでどうしようもないものだけれど、それでも少しずつ確実に進歩している。その進歩は、絶望のなかでも小さな灯りを頼りに歩んできた人たちや、人間というものを諦めなかった人たちの功績だし、わたしもそういう営みを続けていける人間でありたい。
ちなみにこの作品は、主演が以前応援していた人のシンメで、しかも上演劇場はいろいろな思い出の詰まった日生劇場で、題材も気になるから行こうかな…!というノリでチケットの抽選に応募して観劇の切符を手に入れた。すると後日発表されたキャストのなかにヒロイン役として推しがいるという嬉しすぎるサプライズがあった。過去のわたし、本当にとってもいい選択をしたと思う。
今年もたくさんいい選択をして、素敵な作品を見れたらいいな。